03】妊娠中期: ₀₇₎早産の前兆,症状・・原因、なりやすい方

A)早産の前兆
.下腹部が,生理痛の様重い、張る
子宮が収縮して胎児を子宮から押し出そうとしている時、下腹部が生理痛の様に重く張る感じがします。
妊娠後半になると、お腹が張りやすくなります。特に問題ない張りも多いですが、早産の前兆として張る場合あるので、お腹が張る場合は、気を付けて控えめに動いたり、安静加減にします。
子宮の収縮が続くと、子宮口(子宮の出口)が開いて来たり胎児が下降する危険があります。

2.茶色のおりもの(少量の出血)
出血がある時は少量でも危ないことが多いので注意して下さい。

下腹部が重いとか張る感じや、茶色のおりもの
  がある場合>、
1⃣
まず、2~3~4日間、控えめに動いたり安静加減にして下さい。それだけで軽快ことも多いです。
2⃣それでも前兆が続くなら、診察、服薬して、自宅安静をします。
3⃣それでも症状が続くなら、入院して、点滴し、安静にします。

★但し、茶色のおりもの(少量の出血)は少量でも危ない事が多いので、すぐ受診して下さい。

 

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<病院の診察>

正常の子宮

 

早産しそうか、子宮口や児頭をCheck。

.内診して子宮口が開いていないか、

.胎児が下降していないか診察します。

.頸管(子宮口)が軟化していないか診察します。

.経膣超音波で、内子宮口(内側から)が開いていないか、頸管長(子宮の出口の長さ)の短縮がないか診察します。

★★子宮口や児頭が、この様になっているとすぐに早産しそうです。

 

.分娩監視装置で子宮収縮が陣痛様に起こっていないか診察します。


 

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B)早産の症状(早産が差し迫った症状)
1.下腹部痛強いお腹の張り
子宮が陣痛の様に収縮して胎児を押し出そうとしている時、強いお腹の張り、下腹部痛が起こります。
下腹痛が増強するとそのまま陣痛となり、早産に至ります。

2.出血(中等量~量)
出血がある時は少量でも危ないことが多いので注意して下さい。特に鮮血、量が多めの時は危険です。

 

<明らかな「下腹部痛や出血」がある場合は、すぐに入院>
早産止め(子宮収縮抑制)の持続点滴(24時間連続)で行ないます。

<下腹部痛や出血が無くても、下記①~④の場合は、入院が必要です
.内診して子宮口が開いている、
.胎児が下降してる。
.経膣超音波で診察して、頸管長(子宮の出口の長さ)が短縮している。特に20㎜以下に。
.分娩監視装置で子宮収縮が陣痛様に起こっている。

 

?<早産しかかった場合、早めに来院していただくと早産止めの点滴(陣痛抑制薬)で止められますが、進行が進んでいると、特に生まれる直前(早産直前)に来院されたのでは止めらず、そのまま早産してしまいます。そして生まれた未熟児は、夜中でも直ちに未熟児センター(遠方の未熟児センターになることもあります)に緊急搬送しなければなりません>
・・・早めに来院して下さい。
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☂早産の原因:
.頸管(子宮の出口)や子宮内の炎症:
膣から細菌が、頸管や子宮内に入り炎症を起こすことがあります。
頸管(子宮の出口)に炎症を起こると、頸管(子宮の出口)が軟化し開いてきます。又
子宮内に炎症が波及すると子宮収縮が起こりお腹が張りやすくなります。更に
卵膜まで炎症が及ぶと卵膜が傷み破水(卵膜が破れて羊水が流出する事)し易くなります。

.頸管無力症
母体の体質的に、子宮の出口の締める力が弱い場合があります。その為
特に症状が無く、子宮の出口が緩んで開いてくる方がいます。

【正常の方】

【症状なく子宮口が開いている方を頸管無力症と言います
【外子宮口は閉まっていても内子宮口が開いていると頸管長が短縮していますが、近々子宮口が開いてきそうです】

  

 

多胎(双胎、三つ子)、
羊水過多症(羊水量が多過ぎる)、
子宮筋腫合併妊娠

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☂早産になりやすい方:
早産の前兆や症状に気を付けてください。特に①~④の方。
早産したことがある方。今回も50%の確率で早産する可能性があります。
子宮頸管長(子宮の出口=頸管の長さ)が短い方。30㎜以下の方(特に25㎜以下の方)。
子宮口が開いてきている方。
細菌性膣症(膣の中で細菌が異常増殖している)の方。

喫煙、
母体体重増加不良の方。
極端な痩せ
15歳以下、35才以上
長時間労働
円錐切除した方。(子宮癌の前癌状態の為に子宮の出口を円錐形に切除した)

多胎(双胎、三つ子)、
羊水過多、
子宮筋腫がある方、
子宮奇形(子宮の形が悪い)の方。

 

産婦人科外来での鑑別診断の手順と薬物療法’15、 産婦人科研修の必修知識’13、 ガイドライン産科編’14、 Fetal&NeonatalMedicine’14
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03】妊娠中期: ₁₀₎妊婦貧血、貧血の食事,薬

貧血(妊娠中)
原因:
胎児の生育に鉄分が必要なので、母から胎盤を通して鉄分をもらっています。その為母が鉄欠乏性貧血になりやすくなります。血液中の鉄分(血清鉄)が少なくなります。
妊娠中は体の中の血液量が増えるので(体の水分量が増えるので)どなたでも妊娠後半になると、ある程度は血液が薄まって軽い貧血の状態になります。
✿妊娠中の貧血は、ほとんどが鉄欠乏性貧血です。鉄分補給によって予防したり治療できます。

予防:
鉄分を多く含む食品を摂って予防します(飯能市母子手帳p64参照)

鉄分を多く含む食品:卵、肉類?、レバー、大豆や大豆製品(豆腐、納豆、豆乳)、緑黄色野菜、果物、海藻(ヒジキなど)
✿鉄を含む食品をとっても腸から実際に吸収される鉄分は、摂取した量の10%程度です。

 

鉄分には数種類ありますが、ヘム鉄が腸からの吸収が良いです。ヘム鉄は、赤みの肉?、魚、レバー(妊娠初期は禁)に含まれます。
✿✿レバーには多量の鉄分が含まれているし、その吸収が良くなる蛋白質も同時に含まれているので貧血予防には非常に良いのです。しかし、

✿✿「妊娠初期にレバー」を摂ると、レバーには多量のビタミンAが含まれているので、少量摂っただけでもビタミンAの過剰摂取となり、胎児に悪い影響が出ることがあります。その為妊娠初期ではレバーは禁止しています。もし妊娠初期にレバーを摂るとしたら焼き鳥の串の1/3~1/2以下程度に留めます。ニラレバ炒め等を食べると猛烈にビタミンA過剰になります。

 

摂取した鉄分が腸から吸収されやすくする為に蛋白質ビタミンCを一緒にとると良いです。

 

 

妊婦健診(定期健診)中には、妊娠初期、中期、末期に貧血が有るか無いか血液検査をします。

貧血が無ければ、母子手帳p64に書かれているような貧血予防の食事に多少気を付けていただけば良いです。
軽い貧血の時は、母子手帳P64の食事の他に、鉄サプリを摂っていただいても良いです。
中等度や高度貧血の時は増血剤(鉄剤)の内服や注射が必要になります。

病院で処方する増血剤は1錠(フェロミア1錠50㎎)で豚レバー400g相当の鉄分が含まれています。
内服の増血剤の腸から吸収される鉄分は10%程度で、残り90%は便に排出されます。排出される鉄分の為に服用中は便が一時的に黒くなります。

鉄サプリには、錠剤により含有量に違いがあり、又鉄剤には数種類あり、それぞれ腸からの吸収率も違うので妊娠中に日常的にサプリで鉄を摂ること(何をどれだけとるか)は難しいと思います。
鉄分も過剰摂取すると、鉄が肝臓に沈着して問題が起こります。

 

 

✿妊娠後半では1日鉄20∼30㎎を含む食品の摂取が必要とされています(日本人に対して)
✿WHO(国連世界保健機構)勧告:
WHOでは「貧血の有無にかかわらず、すべての妊婦に鉄30~60㎎/日と葉酸400㎍摂取」を勧めています(必ずしも日本人対象ではありません)。(この勧告では、量が、食品+サプリの合計の量㎎,㎍なのか、食品に加えてサプリでこれだけ追加摂取した方が良いのか不明です)

 

 

✿妊産婦死亡率は皆様の努力の結果、次第に少なくなりましたが、いまだ2013年時点では10万人に3.4人(妊産婦3万人に1人の割合)あります。2013年では日本全体の妊産婦死亡の総数は36名でした。日本の妊産婦死亡率は世界的に見て最少の部類の属しています。
✿明治32年では妊産婦死亡率は10万人に410人(2500人に1人の割合)と非常に高率でした。「片足を棺桶に突っ込んで出産に臨む」とまで言われていました。
✿それが次第に減少し2013年時点では10万人に3.4人(妊産婦3万人に1人の割合)であります。現在のこの「妊産婦死亡率10万人に3~6人」は妊産婦死亡率を減少させる限界ではないかともいわれています。
✿医学と医療技術の進歩と向上、経済力,財政力の増大、医療制度,社会保障制度,健康保険制度の整備,普及により妊産婦死亡率を次第に減少させ現在では限界近くまで減少していますが、日本全体でみると毎年必ず40名近くの方が出産前後で、いろいろ手を尽くしても亡くなっております。

 

その妊産婦死亡の原因の1位が分娩前後の大出血です。
分娩時の予期できない突発的な大出血は300人に1人起こります。
万が一の分娩前後の大出血に備えて貧血は治して分娩に臨みたいです。

 

飯能市母子手帳’16、P64、 【妊娠中の食事と栄養】、 【産婦人科外来での鑑別診断の手順と薬物療法】’15、 Wikipedia’17、 産科危機的出血への対応指針’17
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