妊娠中の感染症(母子感染予防法)
母子手帳(飯能市)のp68~69に感染症(母子感染の予防が必要な感染症)について載っています。
1.風疹:
妊娠初期(妊娠2∼3か月)に風疹に感染すると,胎児に先天性風疹症候群(難聴、白内障、先天性心疾患、精神や身体の発達の遅れ)が高率に起こります。その為妊娠初期に感染した場合、人工妊娠中絶の対象になることがあります。
母の感染予防法(妊娠前)(?): 風疹の免疫が無い、又は免疫があっても弱い場合は、妊娠前にワクチン接種を行います。風疹の免疫の有無はは血液検査で調べます。(風疹ワクチンは生ワクチンなので妊娠中には接種できないので妊娠していない時に接種します)
母の感染予防法(妊娠中): 風疹の免疫が無い、又は免疫があっても弱い場合は、妊娠中に風疹に感染する危険性があります。
①マスク、
②人込みは避ける、
③同居の家族の方が風疹に感染して家庭内に持ち込まないように、同居の家族の方に風疹ワクチンをします。
(基本は免疫が無い方がワクチンをするのですが、免疫が有る方がワクチンを接種しても問題はありません。免疫の有無を血液検査で調べずにワクチンを接種しても問題ありません。)
妊娠2~3か月に風疹に感染すると胎児に先天性風疹症候群が高率に起こります。人工妊娠中絶の対象となる事があります。
妊娠4~5カ月に入ると風疹に感染しても胎児に異常が次第に起きにくくなりますが異常が起こることがまだ少しあります。
妊娠6ヶ月に入ると、風疹に感染しても胎児に影響はありません。
母の感染予防法(出産直後)(?):風疹の免疫が無い、又は免疫があっても弱い場合は、出産直後(退院の時又は一か月健診時)に、母に風疹ワクチンをします。ワクチン接種しても授乳可です。母の体内にできた風疹の免疫が母乳を通して新生児に移行するので、新生児が風疹に罹りにくくなります。
2.B型肝炎:
母親がB型肝炎ウィルスを持っている場合、母子感染を起こすことがあります。
母子感染予防の為に
児への感染予防法(?)(出生直後から): 母親がB型肝炎ウィルスを持っている場合、新生児に、出生直後にまず第1回目の予防の注射(ワクチンとγグロブリン)を行います。その後はスケジュールに沿って2回目3回目のワクチンを行います。授乳は可です。
児への感染予防法(日常生活): 母親や父親がB型肝炎ウィルスを持っている場合、
①子供とキスをするときは、唾液の接触を避ける。
②歯ブラシを共有しない。
③親の血や体液が児の口や傷口に触れないようにします。
最近、上記の母子感染とは別に、成人の間で性交等で感染するB型肝炎ウィルスが広まりつつあります。後者を予防する為に2016年から全乳児を対象に「生後2か月目からB型肝炎ワクチンの定期接種」が始まりました。
3.C型肝炎:母親がC型肝炎ウィルスを持っている場合、
児への感染予防法(日常生活): 親の血や体液が児の口や傷口に直接濃厚に触れないようにします。
児への感染予防法(分娩時):母にC型肝炎ウィルスが多量にいる場合、母子感染を予防する為に、帝王切開で娩出することがあります。
4.HTLV‐1(ヒトT細胞白血病ウィルス):
妊婦がヒトT細胞白血病ウィルスをもっていると母乳を通して、赤ちゃんにウィルスが移行します。
児への感染予防法(出生直後から): 妊婦にウィルスがいる場合、授乳の仕方を工夫します。①~③のいずれかを行います。
①母乳を与えずミルクで育てる。
②母乳を与えるなら、産後3か月以内迄の短期間に限定しその後はミルクにする。
③どうしても母乳を与えたい場合は、搾乳して母乳を貯め、1日(24時間以上)凍結保存した後、解凍して与える。
産科ガイドライン’14
5.梅毒:(性感染症)
妊婦が梅毒に感染している場合、障害をもった先天性梅毒児が生まれることがあります。
母の感染予防法(普段): コンドーム使用して予防します。Oral sexも感染する可能性があります
児への感染予防法(妊娠中):母が梅毒に感染している場合でも、妊娠初期に感染を見つけて、妊娠16週~20週までに、母がペニシリンを4週間服用すると、先天性梅毒児の予防ができます。ペニシリンは胎児に影響はありません。 産科ガイドライン’14
6.HIV感染症(エイズ):
母の感染予防法(普段) : コンドーム使用して予防します。Oral sexも感染する可能性があります
児への感染予防法(妊娠中~出生直後):母がHIVの場合でも、①~④するとほぼ児への感染は予防できます。
①妊娠中に母にHIVの薬を投与、
②帝王切開で娩出、
③母乳中止、
④新生児にHIVの薬を投与。
7.トキソプラズマ症
母の感染予防法(妊娠中): (すでに感染している方は予防法は不要ですが、妊娠中に初めて感染すると胎児に問題が起こることがあります。その為まだ未感染の方は予防が必要です)。
①野菜や果物はよく洗って食べる
②?食肉は十分加熱して食べる
③?ガーデニングで、土や砂に触れる時は手袋をする。(砂場の砂の中には犬や猫の糞尿があります)
④?猫との接触に注意。Kissや口移しで餌を与えない。
⑤?猫の糞尿処理は可能なら避ける。
・・・猫の糞尿処理する場合は手袋をする。又は、した後は石鹸をつけて15~20秒手洗いする。 産科ガイドライン’14、一部改変
8.サイトメガロウィルス感染症
母の感染予防法(妊娠中):(すでに感染している方は予防法は不要ですが、妊娠中に初めて感染すると胎児に問題が起こることがあります。その為まだ未感染の方は予防が必要です)。
妊婦様の場合、乳幼児からの感染が主な感染ルートです。
上に子供さんがいる場合や、保育士さん等で子供をお世話する仕事の場合、
①(おむつ交換、子供の鼻やよだれを拭く、子供のオモチャを触った)時、こまめに石鹸と水で15~20秒、手を洗ってください。
②子供と食べ物、飲み物、食器を共有しない。
③おしゃぶりを口にせず、歯ブラシを共有しない。
④子供とキスをするときは、唾液の接触を避ける。
詳細は後述の、 02】妊娠初期:₁₅₎妊娠中のサイトメガロウィルス(詳述) をご覧ください。
9.GBS(B群溶血性連鎖球菌)
GBS菌は常在菌で普段から腸、肛門、膣、産道内にいる菌です。GBS菌がいる妊婦様は10%以上います。普段はいても問題ない菌ですが、胎児が産道を通ってくる時に児に感染することがあり、児に感染すると問題(肺炎、髄膜炎、敗血症)が起こることがあります。
児への感染予防法(陣痛開始で入院時):児が産道を通ってくる時に児に感染するので、陣痛が開始して入院した時(出産直前)に、お母さんに、GBS菌を殺菌する抗生物質の点滴をします。その為陣痛が始まったら早めに来院して下さい。
児への感染予防法(出生後~生後3ヶ月):児への感染に注意。児をお世話するとき、哺乳瓶の消毒、手指のアルコール消毒して等、気をつけます。
10.クラミジア(性感染症)
クラミジアがいると
①流早産の原因となることがあります、
②生まれが児に感染し結膜炎や肺炎を起こすことがあります
母の感染予防法(普段): コンドーム使用して予防します。Oral sexでも感染する可能性があります
クラミジアがいる場合、流産早産予防の為に又児への感染予防の為に:男女同時に、ジスロマック1回服用します。1回服用でほとんどが治癒します。ジスロマックは胎児に影響はありません。
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