筋腫の治療、手術
❶漢方薬(保険適用)
桂枝茯苓丸、又は当帰芍薬散。1~2~3か月服用して効果がみられる方がいます。
❷注射(GnRHアゴニスト)(注射名、リュープリン、リュープロレリン、ブセレリン等)
月1回で6回皮下注射します。1回注射すると1か月効いています。
保険適用ですが1回10000円位かかります。
一時的に月経が止まり、数か月にわたって一時的に閉経の状態になります。6回目注射終了後は生理は通常通りに戻ります。
過多月経、生理痛は良くなります。子宮筋腫もかなり小さくなります。しかし症状が数ヶ月~1年で元に戻る方もいます。
閉経に近い方では、症状が元に戻った場合、再度6回注射して、閉経までしのぐ(閉経逃げ込み療法)こともあります。閉経すると筋腫は自然に小さくなります。
閉経に近い方では、6回注射後そのまま本当の閉経になることもあります。
子宮筋腫が非常に大きくて手術がやり難い場合は、筋腫を小さくする為に、手術の前に注射を3~6か月間することもあります。
❸IUS:IUSは(製品名ミレーナ)子宮内に入れておく避妊器具です。
保険適用で挿入時、初回に10000円程度かかります。
挿入は数分でできます。抜去する場合も数分でできます。
ミレーナには、軸に女性ホルモンを貯めておく円筒形のタンクついています。そのタンクからレボノルゲストレルという女性ホルモンが5年間にわたって徐々の放出されるます。
元来、避妊の目的で作られましたが、ミレーナから女性ホルモン(黄体ホルモン)が徐々に放出されるので、そのホルモン作用の為、過多月経、生理痛がひどいという症状が良くなります。その為過多月経、生理痛の治療法として保険で挿入することができる様になりました。
ミレーナ挿入で1/3の方は筋腫が縮小するので、筋腫を縮小する効果も一部の方では期待できます。
5年間入れっ放しにできます。
挿入後3か月間は不正出血が起こる事があります。様子を見ているうちに止まります。
子宮筋腫の為、子宮内が変形しているとか子宮筋層(子宮の壁)が厚い方は、挿入後脱出する事があります。脱出するかどうかは「入れて見ないとわからない」という面があります。
❹手術
a)かb)を行います。
a) 筋腫核出術:筋腫核(子宮筋腫のシコリ)だけを摘出して子宮本体は残します。
b) 子宮全摘術:筋腫核を含め、子宮全部を摘出します。
手術の方法には、イ)、ロ)、ハ)、があります。
イ) 開腹術:下腹部に10~12㎝程度の切開を入れて、上記のa)かb)を行います。7日間程度の入院となります。
ロ) 腹腔鏡手術:腹壁に直径1㎝位の穴を4か所開け、その穴を通して腹腔鏡(鉛筆位の太さの望遠鏡の様な内視鏡)を挿入して、腹腔内をのぞきながら、上記のa)かb)を行います。回復は早く4~5日の入院で済みます。傷もほとんど残りません。
ハ) 子宮鏡手術:子宮内にできた粘膜下筋腫を切除する時に用います。子宮口から子宮鏡(鉛筆より細い望遠鏡の様な内視鏡)を入れて、子宮内をのぞきながら筋腫を切除します。開腹術をせずに済みます。1泊2日位の入院で済みます。
子宮内に大きく突出した粘膜下筋腫では子宮鏡手術で切除し易いですが、
子宮内にあまり突出していない粘膜下筋腫では子宮鏡手術はやりにくいです。
❺その他の治療法(実施する病院は、ごく一部の病院に限られています)
⑤-1 子宮動脈塞栓術
保険適用
子宮動脈(子宮に栄養を送る血管)を閉塞して子宮筋腫を縮小させます。
右大腿動脈からカテーテルという細い管を挿入し子宮動脈まで到達させ子宮動脈を閉塞させます。閉塞には1~3週間で自然に溶ける物質を使うので、1~3間後には閉塞は解除されます。
35~60%の方が子宮筋腫縮小。50%の方が過多月経改善。80%の方が5年間症状改善します。
20%の方は効果が低かったり再発します。
治療後の妊娠では、妊娠中のトラブルが多くなるので、今後妊娠を希望しない方に行います。
筋腫の手術を希望されない方、肥満の為手術が難しい方に行います。
4日程度の入院で済みます。
⑤-2 集束超音波治療
保険適用はありません。
腹壁上から超音波を当て、超音波を「レンズで光を集める様に」筋腫核に集中させます。筋腫核の中印温度を65∼85℃に高め、筋腫核に中心を壊死させます。
1回に4~5時間かかります。4~5時間不動の体勢でいなければなりません。
治療は1日で終了します。翌日から就労できます。麻酔不要。創もできません。
実施できない筋腫や治療効果が低い筋腫があります。
再発もあります。再発したら再実施もできます。
筋腫の大きさが40~60%縮小します。70∼80%の方が症状改善します。
1~2の方は「この治療を受けなければよかった」と回答しています。
治療装置が高額の為、治療費(自費)が高額になります。
⑤-3 凍結療法
MRIの画像で確認しながら筋腫核に針を刺し、針先からドライアイス又は液体窒素又は高圧アルゴンガスを注入します。
筋腫核の中心が―20℃以下に凍結され壊死します。
2泊3日の入院で済みます。1週間で通常の生活に戻れます。
治療装置が高額の為、治療費(自費)が高額になります。
子宮筋腫(日本産婦人科医会H27)、 ガイドライン婦人科外来編’17、 ガイドライン産科編’17、 産婦人科研修必修知識’16~’18、 他
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