04】妊娠後期: ₀₇₎骨盤位(逆子)と外回転術

骨盤位(逆子)と外回転術
赤ちゃんは頭から出てくるのが正常です。頭が下にあって頭から出てくる体勢を頭位と言います。お尻から出てくる体勢を骨盤位(逆子)と言います。

頭位   骨盤位(臀位、足位) 

妊娠中期では30~50%の方は骨盤位になっていますが、妊娠が進むにつれて自然に頭位に変わり、分娩時までに治らない方は3~5~6%です。妊娠の途中で骨盤位と言われても約90%は自然に回転して頭位になります。
妊娠28週以降でお尻が下だと骨盤位と言います。
妊娠32週以降で尚骨盤位の場合は、寝る前に10~15分間、骨盤位(逆子)を治す体操をします。
妊娠35週以降になると、骨盤位が自然に治る確率は2%以下と少なくなります。

 

骨盤位を経膣分娩(自然分娩)させると、5%の児が亡くなるか又は後遺症を持ちます。
もし37週迄に骨盤位が治らなければ、37週以降に日を決めて陣痛発来前に帝王切開で娩出します。

 

医師が母体の腹壁から胎児を回転させることを外回転術と言います。外回転術を試みて、骨盤位が頭位になれば帝切は避けられ経膣分娩できます。
外回転術の成功率は約50%です。(初産婦40%、経産婦80%、経産婦の方が成功率は高いです)
外回転術を行うと合併症として胎盤早期剥離が約3%に起こることがあります。胎盤早期剥離が起こるとすぐに緊急帝切が必要です。
※※※外回転術の成功率60~70%、外回転術後の緊急帝切率1~2%、というデータもあります。
その為、外回転術を本格的にする場合は、緊急帝王切開ができる状況(硬膜外麻酔を入れたりして)の病院で行います。骨盤位が治る利点と、胎盤早期剥離が起こって緊急帝王切開になるリスクと比べて、天秤ばかりにかけて、外回転術をするかどうか、希望を採ります。

 

外回転が成功し易い方
35週頃に行うと成功率が高いです。できるだけ36週迄に行います。次の方は成功し易いです。簡単に外回転で治る場合は2~3分で治ります。2~3分ごく簡単に治りそうな方だけ希望で外回転を行います。成功しにくい方は初めから除外します。

胎盤が子宮の後壁に付着している。
胎盤が子宮の前壁に付着している場合では、外回転術をすると胎盤に力が加わり胎盤剥離を起こす危険があるので外回転術は行いません。

胎盤 後壁付着   胎盤 前壁付着

 

胎児の臀部が下降していず浮動している(臀部が骨盤にハマっていない)。
胎児の臀部が骨盤のトンネルにすっぽりハマっている場合(お尻が土管にすっぽりハマっている状態)では、外回転しても成功しません。

    

腹壁が薄い、児頭が腹壁から触れる、母が肥満ではない。
経産婦は腹壁が軟らかいです。
腹壁が厚かったり、硬いと外回転は成功しません。

子宮収縮が無い(お腹が張っていない、腹壁が軟らかい)

横位(胎児が横になっている)、簡単に回転できることが多いです。

 

複臀位(両足を曲げて、体育座り、しゃがんでいる状態)の方が外回転は成功し易いです。
単臀位(両足を振り上げて、両足が顔の前に来ている)では、成功し難いです。

成功し易い   成功しにくい

羊水量が十分ある。
羊水量が多い方が児が動きやすく外回転し易いです。

臍帯巻絡が無い、

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外回転術を希望されない方は、以下は読まなくても、大丈夫です。

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外回転術】
35週頃に行うと成功率が高い、できるだけ36週迄に行います。37週以降になると羊水量が減るので、外回転術は成功しにくくなります。
外回転術を行うと1~2%の確率で胎盤早期剥離が起こるので、胎盤早期剥離に気を付けながら行います。
早期剥離が起こったときにすぐに緊急帝王切開ができる状況の下で、外回転術を行います。硬膜外麻酔(無痛分娩に使う麻酔と同じです)を入れてから外回転術をすると、成功率が高くなるし、又緊急帝王切開する場合には手術の麻酔としても使えます。
35週以降なら、児が成熟してきているので、緊急帝切出で娩出しても問題が少なくなります。
子宮収縮抑制剤(早産止めとしてよく使われる薬です。内服と点滴があります。子宮筋の緊張を除きます)をしながらすると、成功率が上がります。

 

<ごく簡単な外回転術>(希望の方だけ)
当院で、もし外回転術を試みる場合は、1~2分以内に極々簡単に外回転術が成功しそうな方だけ選んで、外来の診察室で、軽くそっと行います。難しそうな方は初めから行いません。1~2分の外回転術の試みで、骨盤位が治れば帝切が避けれらるのでLuckyです。2~3分以上時間をかけても外回転が成功しない方はすぐ諦めて中止します。無理に行うと胎盤早期剥離の原因になるので2~3分以上は行いません。
❂外回転術後、念のため5~6時間後に、NSTや超音波で、胎児や胎盤の状態をCheckします。

 

<本当の外回転術>(希望の方だけ)
本当の、本格的な外回転術をする場合は、日帰り入院をして半日~1日がかりで行います。外回転術後、胎盤剥離等が起こって万一赤ちゃんの状態が悪くなれば緊急帝王切開をする覚悟で行います。緊急帝王切開になる確率は1~2%です。
手順
超音波で胎児の向き、胎盤の位置、羊水量、臍帯巻絡の有無等を確認します。
子宮収縮抑制剤(早産止めとしてよく使われる薬です。子宮筋の緊張を除きます)の点滴を行います。
硬膜外麻酔(無痛分娩に使う麻酔と同じです)を入れて、子宮筋の緊張を除くと成功率が50%だったものが80%に迄上がります。又緊急帝王切開する場合は手術の麻酔として使えます。
外回転術を10分、治らなければ休憩をはさんで更に10分、それで治らなければその日は諦めて後日再度外回転術を試みます。
外回転術後、NST,超音波で胎児や胎盤の状態を観察します。胎盤剥離は起こる場合は外回転術後6時間以内に起こるので、6時間は注意して看ます。
母体がRH(-)の場合は、外回転術後、抗D抗体を注射します。

 

産婦人科治療’04.4、  産婦人科,研修ノート’08、  AJOG’08、  周産期新生児学会誌’10、  産婦人科研修の必修知識’13、  ガイドライン産科編’14、’17
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