42】トリコモナス膣炎

トリコモナス膣炎

トリコモナス原虫が膣内に侵入して膣炎を起こします。
トリコモナス原虫:原虫とは顕微鏡で診ないと見えない小さな虫です。楕円形の本体に短い尾がついていてオタマジャクシの様に動いています。
トリコモナス原虫は、主に性交で感染する為に、性感染症とされますが、稀に下着、タオル、浴槽、便器から感染することもあります。
トリコモナス原虫がいる場合は、不潔な性交があった可能性があるので、クラミジアや淋菌等の他の性感染症も検査しておいた方が良いです。
トリコモナス原虫は、膣以外に尿道やバルトリン腺(膣口周囲にある分泌腺)にも入り込むこともあります。
トリコモナス原虫がいても10~20%(20~50%という意見もあります)の方が無症状です。感染しても無症状の方がいるので、いつ感染したか判り難いこともあります。無症状の感染者がトリコモナスをバラまくこともあります。

症状
①オリモノ(多い、泡様、黄白、膿様)
②ひどくなると膣壁が荒れて、性交時等で出血し易くなります。
③悪臭(トリコモナス原虫がいると、他の雑菌が増殖し悪臭の原因となります)
④外陰の痒み

検査
<女性>
①オリモノを採って顕微鏡検査をします。殆どの場合顕微鏡検査ですぐにわかります。たまにトリコモナス原虫の数が少ない場合があり顕微鏡でトリコモナス原虫が見つからないことがあります。その場合は
②オリモノの細菌培養検査を行います。

<男性>
男性が検査する場合は尿検査(尿顕微鏡検査、尿培養検査)を行います。男性の検査は難しく、トリコモナス原虫が実際に入るのに陰性(いない)という誤った結果が出ることがあります。その為男性の検査は必須ではありません。

治療
<女性>
内服:基本は内服です。
①毎日内服法、フラジール内服薬1回1錠1日2回,10日間、又はチニダゾール内服1回1錠1日2回,7日間
②1回内服法、チニダゾール内服薬1回4錠、1回だけ内服
➽①又は②を内服しますが、更に膣錠を併用すると再発率が少なくなります。
膣錠:フラジール膣錠1日1錠,10~14日挿入、又チニダゾール膣錠1日1錠,10~14日挿入

<男性>
上記①又は②を内服します。

治療後の再検査は、次の月経後に行います。トリコモナス原虫が消失したかどうかを確認します。
ほとんどの方は直に治りますが、稀に難治性の方がいます。難治性の方は1週間空けてから更に①又は②を内服します。又は薬を変えてみます。
再感染防止の為にお相手の男性の治療も必須です。この場合男性は検査せずに服用しても構いません。
感染予防の為にはコンドームを使用します。
トリコモナス治療薬(前記の薬=ニトロイミダゾール系の薬)を服用中にアルコールを飲むと、腹痛、嘔吐、潮紅、が起こる事があります。この為服用中と服用後3日間はアルコール禁です。
妊娠12週未満の妊娠初期の方は、フラジール錠を内服します(フラジールはFDA旧分類B、CDCガイドラインで全妊娠期間中内服可)。チニダゾール錠の内服は胎児に影響することがあるので禁忌です。

 

産婦人科外来での鑑別診断の手順と薬物療法、  産婦人科研修の必修知識2016~2018、  ガイドライン婦人科外来編’17

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