母乳と薬
ほとんど全ての薬は母乳中に移行します。その為薬の添付文書(薬の効能書き)には、服用中は「母乳を避ける事」とか「母乳を避けることが望ましい」と書かれている事が多いです。しかしほとんどの場合、母乳に移行する量は微量で児に影響する量ではありません。
例外はありますが、母が服用する薬は殆ど児に大きな影響を与えません。
下記の少数の例外があります。
<授乳禁止の薬>
➀抗がん剤
②治療目的の放射性物質
③アミオダロン(不整脈の薬)
<授乳中は慎重投与>授乳禁止ではありませんが児に影響がある可能性がある薬。
★抗てんかん薬(癲癇治療薬) 母乳中にやや濃く出ます。
★抗うつ薬(うつ病の薬) 母乳中には濃く出ないので児に殆ど影響しません
★抗不安薬(精神安定剤) 母がジアゼパム(精神安定剤)を長期服用していると、児が傾眠傾向(ウトウト眠い感じ)や体重増加不良となることがあるので、長期服用中の授乳はあまり勧められません。
★気分安定剤 炭酸リチウム療法中の授乳はあまり勧められません。
★抗精神薬(精神病の薬) 母乳への移行は非常に少ないので禁止ではありません。しかし児に錐体外路症状(筋肉硬直、振るえ等)が起こる事が有るので、児を観察しながら服用します。
★麻薬系の薬(コデイン等、咳止めとして風邪薬に入っていることもあります) 全ての麻薬系の薬は母乳授乳中は2日以内にします。
★無機ヨウ素 乳汁中に濃く出る為、児に甲状腺機能低下症が起こる事が有るので、児を観察しながら服用します。
慎重投与の薬を授乳中に服用する場合は、児に傾眠傾向(ウトウト眠い感じ)、飲み低下、機嫌が悪い、体重増加不良、が起きていないか観察しながら服用します。
母乳中に薬の移行が気になる方は、
➀授乳させた直後に服用。
②3時間後の次の授乳時、母乳は搾乳して捨てる。つまり母乳授乳を1回パスします。
③その次の3時間後から母乳授乳します。
➽ただし、この方法が本当に有効かどうかは証明されていません。
母乳中にどの程度薬の成分が出るのか知る為に、母乳中の薬物濃度を測定することもあります。(抗てんかん薬服用時やリチウム療法時)
国立成育医療センターのホームページの「妊娠と薬情報センター:授乳中の薬の影響」も参照できます。
「妊娠と薬情報センター」に電話相談もできます。03-5494-7845 午前10~12時、午後13~16時
産婦人科研修の必修知識2016~2018、 ガイドライン産科編’17
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