45】更年期: ₀₂₎治療

45】更年期: ₀₂₎治療

 

1)漢方薬
症状が軽い方は漢方薬でしのげることがあります。当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、の3種類が最も使われます。
桃核承気湯、温経湯等も使われます。

 

2)ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法はHRTとも言います。HRTとは、Hormon(ホルモン)Replacement(補充)Therapy(療法,治療)の略です。
更年期で少なくなった女性ホルモンを補充する治療法です。

ⓐ周期的投与法とⓑ連続投与法があります。
ⓐ周期的投与法は、まだ月経がある方に行います。女性ホルモンを、月経に近い消退出血(月経と同様な出血)が起こる様にに、3週間投与して1週間休薬します。1週間休薬している間に生理が来ます。
ⓑ連続投与法は、月経が既に無い方(終わっている方)に行います。女性ホルモンを連続投与中は生理は来ません(連続投与を中止するとその数日後だけ生理が来ます)。連続投与中はたまに不正出血する事がありますが自然に止まる事が多いです。

投与する女性ホルモンには、内服薬、貼薬、塗り薬がありますが、貼薬、塗り薬が内服薬より副作用が少ないのでお勧めです。

女性ホルモンには、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが有りますが、両方が含まれている貼薬(製品名、メノエイドコンビパッチ)が良く使われます。週2回張り替えます。

ホルモン補充療法開始時期は、閉経後10年未満です。又は60歳未満です。

ホルモン補充療法を続ける期間。5年以内なら問題はないと言われています。それ以上続ける場合は、副作用に気を付けながら続けます。

国別のホルモン補充療法の普及率です。

53】乳癌:₀₁₎乳癌自己検診法
欧米ではホルモン補充療法は既に15~20年もの実績があり、ホルモン補充療法を行うことが常識化しています。

ホルモン補充療法。
1)できる方
2)注意しながら行えば行っても良い方。
3)行ってはいけない方
・・・・ほとんどの方は問題なく行えますが、稀に2)や3)の方がいらっしゃいますので注意します。

ホルモン補充療法時の検査
▲開始前の検査: 血液検査、超音波検査(子宮や卵巣をCheck)、子宮癌検査(頸癌,体癌)、乳癌検査
▲ホルモン補充療法中の検査:
・・・6か月毎に、血圧、血液検査
・・・12カ月毎に、血液検査、超音波検査(子宮や卵巣をCheck)、子宮癌検査(頸癌,体癌)、乳癌検査

?ホルモン補充療法の副作用
乳癌
5年以内なら問題はないと言われています。それ以上続ける場合は、乳癌の発生等の副作用に気を付けながら続けます。
女性ホルモンには卵胞ホルモンと黄体ホルモンが有ります。その黄体ホルモンの影響で乳癌が若干増えます。乳癌になる確率は1人/3000人ですが、ホルモン補充療法すると3割くらい増えて1.3人/3000人になります。
乳癌の確率がもともと小さいので3割増加するといっても増加する実数は極々わずかです。
1年に1回の乳癌検診の他に、月1回位はご乳癌自己検診を行ってください。乳癌の自己検診はご自分で簡単にできて乳癌を早期に発見できます。乳癌の自己検診法については、「53】乳癌:₀₁₎乳癌自己検診法」、を御参照ください。

血栓症
自然の状態でも1~5人/1万人中起こりますが、ホルモン補充療法すると3~9人/万人に増えます。血栓症の確率がもともと非常に小さいなので、2倍に増加するといっても増加する実数はわずかです。血栓症が起こるとしたら服用開始の最初の2∼3ヶ月に起こりやすいです。
血栓症は最初は下肢の血管内に血栓(血の塊)ができるのでの血栓症の初期症状は下肢が腫れたり痛くなったり発赤します。下肢の血管内にできた血栓がその後流出すると肺の血管を詰まらせて胸痛や呼吸困難を起したり、脳の血管を詰まらせて突然激しい頭痛、舌のもつれ、目が見えにくい等の症状を起こします。
症状が起こったらすぐに受診すると殆どの場合は治療で問題なく済みます。
血栓症はエコノミークラス症候群とかロングフライト症候群とも言われるように狭い座席に長時間座ってジッとしていると血流が滞って血栓(血の塊)が起こりやすくなります。3~4時間毎位に歩いていれば下肢の血流が良くなり血栓ができにくくなります。
ホルモン剤服用して血栓症が起こり死亡に至るまでに至ってしまう方は方は1人/19万人位の確率です。

ホルモン補充療法で処方する女性ホルモン量(内服薬)
最近は使用する女性ホルモンの量を半分にまで減らして、副作用を少なくする工夫がなされています。量を半分に減らしても効果は落ちず副作用が少なくなります。
具体的には、内服する用を半分に減らすとか、一日おきに服用するとかにします。
内服ではなく、貼り薬や塗り薬の方が副作用が少ないとされています。

 

 

3)注射(男女混合ホルモン)
1回注射すると1か月効いています。
注射後数日で全ての更年期症状が劇的に消えます。
この注射で全ての症状が消えれば「現在出ている症状はすべて更年期症状である」ということがわかります。
この注射は40年以上前から使われている注射です。保険が効き1回2000円以下です。
注射後1か月くらいで効果が切れて再び症状が出る事があります。症状が出たら再び注射をします。症状が出なければ注射は不要です。数回注射をすると症状が出なくなる事が多いです。
骨粗鬆症にも効きます。その為更年期を過ぎた方でもこの注射をすることがあります。

 

 

4)代替療法
ホルモン補充療法の代替になる(代わりになる)治療法です。
①大豆から抽出した大豆イソフラボン(製品名エクオール)・・・大量に使用すると植物性ですが女性ホルモン作用が出て問題になる事があります。
②大豆イソフラボンの分解産物(製品名S-エクオール)
③胎盤抽出物(製品名メルスモン、プラセンタ)・・・特定生物由来製品なので、使用時には患者様の使用同意書が必要です。注射した記録は20年間保存します。
④ブドウ種子ポリフェノール
⑤抗てんかん薬(てんかん治療薬)(製品名ガバペン)
⑥降圧剤(高血圧の薬)(製品名カタプレス)
・・・・⑤⑥は更年期症状の「顔のほてり」に効く事があります。

 

 

5)向精神薬(精神科の薬、うつ状態やうつ病の薬)
更年期の「うつ状態やうつ病」に対してもホルモン補充療法が効きますが、
最近では副作用の少ない新型の抗うつ薬(製品名パキシル、レクサプロ、サインバルタン等)が良く使われ効果を上げています。
更年期の「うつ状態やうつ病」にはホルモン補充療法より新型うつ病薬が効くというデータも出ています。
更年期の「顔がほてる、汗をかきやすい、手足がしびれる、動悸がする等」の症状にも、ホルモン補充療法より新型抗うつ薬が効くというデータも出ています。
うつ状態が強い方は、一度精神科を受診し相談されるように勧めています。

 

 

ガイドライン婦人科外来編’17   産婦人科研修の必修知識’16~’18   産婦人科外来での鑑別診断の手順と薬物療法’15   ナイスミディ   よくわかる更年期ガイド(NPO女性の健康とメノポーズ協会’14   ホルモン補充療法(HRT)のすすめ、日本産婦人科医会、自由企画出版’12   これってもしかして更年期?、水沼,久光製薬,’16   更年期応援ガイドブック,小山,久光製薬’18   女性ホルモンお役立ちメモ,石塚,久光製薬,’16
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