07】産後:₀₁₎乳房緊満~乳腺炎、授乳可

乳房緊満~乳腺炎、乳腺炎でも授乳可

母乳の種類
出産~産後2日目頃: 初乳
産後3日目~8日目頃: 移行乳
9日目~ : 成乳

 

乳房が軽く腫れ、軽い痛みが始まります。
産後3日目~5日目頃、移行乳の頃、乳汁分泌が増えて来て、誰でも乳房が軽く腫れ、軽い痛みが出てきます。

➀病的乳房緊満
産後3日目~5日目頃 溜まってきた乳汁を頻繁に授乳(又は搾乳)しないと、乳汁が溜まり過ぎて乳房がパンパンに腫れます。
両側の乳房に軽い発赤、腫れ、痛みが出ます。微熱が出ることもあります。
★予防には、乳房内に乳汁が溜まり過ぎないように、頻繁に授乳(又は搾乳)します。

うっ滞性乳腺炎
乳汁のうっ滞がさらに強くなると、うっ滞性乳腺炎になります。乳房に炎症が起きます(この炎症は細菌感染によるものではありません)。
★通常は片側の乳房に起こります。乳首に向かって楔型に広がる発赤、腫れ、痛み、38.5℃以下の発熱が起こる事があります。症状はまだ軽いです。
★病院で、搾乳(又は搾乳)指導を受け、良く搾乳して、乳汁のうっ滞やシコリをなくします。消炎鎮痛剤、冷湿布を処方してもらいます。

化膿性乳腺炎
うっ滞性乳腺炎に感染が加わると、可能性乳腺炎となります。原因菌は黄色ブドウ球菌が最も多いです。
★上記のうっ滞性乳腺炎が24時間以内に改善しない時、または急速に悪化する場合は、可能性乳腺炎と考えます。
★通常は片側の乳房に起こります。乳首に向かって楔型に広がる発赤、腫れ、痛み、38.5℃以上の発熱、悪寒(寒気)、関節痛もあり、症状はうっ滞性乳腺炎より強いです。
★上記のうっ滞性乳腺炎の処置に加えて、抗生物質の内服又は点滴注射しますが、ほとんどの場合は1~2日で直に良くなります。
★2~3日で改善しない場合は、薬を変えたり、再度診察をします。

 

と区別がつきにくいことも度々あります。

乳腺炎を起こしている乳房から、授乳しても問題はありません。

 

産婦人科研修の必修知識2016~2018、  ガイドライン産科編’17

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07】産後: 母乳と薬

母乳と薬

ほとんど全ての薬は母乳中に移行します。その為薬の添付文書(薬の効能書き)には、服用中は「母乳を避ける事」とか「母乳を避けることが望ましい」と書かれている事が多いです。しかしほとんどの場合、母乳に移行する量は微量で児に影響する量ではありません。

例外はありますが、母が服用する薬は殆ど児に大きな影響を与えません。

 

下記の少数の例外があります。
<授乳禁止の薬>
➀抗がん剤
②治療目的の放射性物質
③アミオダロン(不整脈の薬)

<授乳中は慎重投与>授乳禁止ではありませんが児に影響がある可能性がある薬。
★抗てんかん薬(癲癇治療薬)  母乳中にやや濃く出ます。
★抗うつ薬(うつ病の薬)    母乳中には濃く出ないので児に殆ど影響しません
★抗不安薬(精神安定剤)    母がジアゼパム(精神安定剤)を長期服用していると、児が傾眠傾向(ウトウト眠い感じ)や体重増加不良となることがあるので、長期服用中の授乳はあまり勧められません。
★気分安定剤   炭酸リチウム療法中の授乳はあまり勧められません。
★抗精神薬(精神病の薬)    母乳への移行は非常に少ないので禁止ではありません。しかし児に錐体外路症状(筋肉硬直、振るえ等)が起こる事が有るので、児を観察しながら服用します。
★麻薬系の薬(コデイン等、咳止めとして風邪薬に入っていることもあります)  全ての麻薬系の薬は母乳授乳中は2日以内にします。
★無機ヨウ素   乳汁中に濃く出る為、児に甲状腺機能低下症が起こる事が有るので、児を観察しながら服用します。

慎重投与の薬を授乳中に服用する場合は、児に傾眠傾向(ウトウト眠い感じ)、飲み低下、機嫌が悪い、体重増加不良、が起きていないか観察しながら服用します。

 

母乳中に薬の移行が気になる方は、
➀授乳させた直後に服用。
②3時間後の次の授乳時、母乳は搾乳して捨てる。つまり母乳授乳を1回パスします。
③その次の3時間後から母乳授乳します。
➽ただし、この方法が本当に有効かどうかは証明されていません。

 

母乳中にどの程度薬の成分が出るのか知る為に、母乳中の薬物濃度を測定することもあります。(抗てんかん薬服用時やリチウム療法時)

 

国立成育医療センターのホームページの「妊娠と薬情報センター:授乳中の薬の影響」も参照できます。
「妊娠と薬情報センター」に電話相談もできます。03-5494-7845 午前10~12時、午後13~16時

 

 

産婦人科研修の必修知識2016~2018、  ガイドライン産科編’17

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