02】妊娠初期: ₁₇₎妊娠悪阻症(つわり)

妊娠悪阻症(つわり)
つわりの症状は、 食欲がない、何となくむかつく、吐く、生唾がたくさん出る、よだれが止まらない、だるい、眠くて仕方がない、頭が重い、頭痛、
50~60%の方に起こります。
早ければ妊娠5週(生理が1週間遅れ)頃から始まります。妊娠7~9週がピークです。妊娠12週過ぎると(4ヶ月に入ると)軽くなり、遅くても妊娠16週頃(4ヶ月の末)までには治ります。
つわりは、誰にであるのでそのまま様子を見ていて良いのですが。病的なつわりの場合は治療します。
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通院が必要な)病的なつわり:
体重が、5%以上減少。
尿中ケトン陽性(尿検査で尿中にケトンが出ている)。
( ①②に当てはまらないけど)、日常生活に差し支える程ひどい場合。

下記なら来院して下さい。
a)
体重が3~5㎏近く減っている場合は来院して下さい。又は
b)
嘔吐がひどい為に飲食が2~3日間全くできない場合は来院して下さい。

治療
・・・・・・内服薬を服用したり、通院で点滴をしたりします。
内服薬:漢方薬(小半夏加茯苓湯,五苓散,半夏厚朴湯,人参湯,六君子湯)、ビタミンB₆、プリンペラン。
点滴:    水分、電解質、糖質、ビタミンB₁ 、
B₆、 B₁₂、 C、を点滴で補給します。通院で1日1~2本点滴します。

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入院が必要な)病的なつわり

体重が5~10%以上減少。・・・体重が10%以上減ると(4~5㎏以上体重が減少すると)つわりはかなり重症での為、入院を勧めます。
尿中ケトン陽性。・・・・・ 尿検査で尿中にケトンが強く出ているとかなり重症の為、入院を勧めます。

つわりが非常に重症になると、フラフラになります。又意識がもうろうとしてきて意識障害(脳障害、脳症)が出てきます。

治療
全く飲食ができなくても、入院して
「500㎖の点滴を1日5本程度、毎日」していれば、つわりのひどい時期をしのげます。

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非常につらいのは約1か月間です。妊娠12週(妊娠4カ月)になると軽くなります。
妊娠早期からつわりがある方は流産率が少ないという研究報告もあります。

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つわりの時の生活の仕方
実家に帰ると楽になることもあります:  「夫を見ると何となく気分が悪いのであまり近寄らない」「夫がそばにいるだけで、いらいらするのであまり相手をしてほしくない」という意見も多いです。夫と一時的に離れて実家に帰ることも考えます。親には甘えることができるし、つわりが苦痛でも一人ではないし、精神的にも楽になります。母親に励まされて少しは食事がとれるようになります。

夫の頼んでみること(夫がしてあげられること):  料理を作る。料理の後片付け。一緒に外食。妻を実家へ帰す。妻が夫の食事を作らない。妻が夫を待って食事をしない。妻が夫と同じものを食べない。夫に一人で外食してもらう。朝食を簡単に済ませる。
夫が買い出しする。夫が布団の上げ下ろしをする。妻が夜中に起きだしても嫌な顔をしない。積極的に妻に声をかける。夫が自分でできることはすべてする。旅行やドライブに連れてって。

におい(シャンプー、コロン、ムース等)、湯気(炊飯器、ご飯等)で気持ち悪くなる方もいます。ベランダでご飯を炊く方もいます。冷やすと臭いや湯気が立たなくなりに食べやすくなります。

空腹になると気持ちが悪くなる方がいます。2∼3時間ごとに少量ずつ何回にでも分けて食事をとります。

朝、つわりがひどいのは胃が空の為とか言われています。
その為、夜中でも目が覚めたら3~4時間毎にでも枕元に置いたおにぎり、クラッカー、ナッツ類等食べます。又朝、目が覚めたら枕元に置いたおにぎり、クラッカー、ナッツ類等を食べてから20~30分後に起き上がります。

つわりの間は偏食でもOK。

つわりの時は、普段食べないようなものもトライして食べてみます。普段食べないようなものの中に、つわりの時に食べられるものがあるかもしれません。ご自分に合った食材を探します。

食べたい物、食べられる物: 桃、スイカ、メロン、梨、ぶどう、バナナ(適度に甘く軽度の酸味があるもの)、パン、サンドイッチ、ポタージュ、クラッカー、クッキー、ドーナツ、コーンフレーク。ご飯を使うならチャーハンやカレー。マヨネーズ、コーヒー牛乳、牛乳、コンソメスープ、炭酸系、サイダー、卵豆腐、焼き魚、ハンバーグなら食べやすいです。
食べたくない物、食べられない物、食べにくい物
オレンジ、ミカン、ご飯、雑炊、お茶漬け、野菜炒め、野菜は食べにくい、油炒め、酢の物、ドレッシング、乳酸菌飲料、果汁飲料、ゆで卵、目玉焼き、肉類は食べにくいです。

ビタミンB₁を多く含む食品: 小麦胚芽、牛肉、豚肉、ゴマ、豆類、ナッツ類・・・・重症妊娠悪阻症による脳症予防の為に、できたら多めにとりましょう。
ビタミンB₆ を多く含む食品: 牛肉、豚肉、魚・・・・妊娠悪阻症の症状改善の為に、できたら多めにとりましょう
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つわりがひどく、飲食ができず体重減少が激しいけど、赤ちゃんは大丈夫?:
妊娠12週でも、胎児の体重は30~40gで、まだ非常に小さいので、母体に蓄積された栄養で十分育ちます。たとえ、飲食できず体重減少が激しくても、胎児は順調に育っているものです。
胎児の発育は、病院で超音波で確認できます。

 

深部静脈血栓症(血の塊ができ血管が詰まる)に注意:
重症妊娠悪阻症(重症つわり)で、「脱水状態+長期臥床」が続くと、
飲水不足の為脱水状態になり血液が濃縮する為、又
長期臥床の為に血液の流れが悪くなる為に、
下肢の静脈の血管内に血栓というかさぶたの様な血の塊ができて、血管が詰まりやすくなります。

深部静脈血栓症の予防の為には
水分補給して脱水状態を改善させます。
スポーツドリンクの様な経口電解質液でも、水分補給や電解質補給(深部静脈血栓症予防)に役立ちます。
スポーツドリンクの氷を作ってなめると良いです。
安静臥床中でも時々足曲げや歩行して下肢の血流を良くします。

 

前回の妊娠で妊娠悪阻症(つわり)があった方は,次回に妊娠での妊娠悪阻症(つわり)の予防の為に、受精前から妊婦用マルチビタミン服用すると良いです。

 

産婦人科ガイドライン’11、’14、 「産婦人科外来鑑別診断,薬物治療」、 小冊子「つわりに負けない10カ条」
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