04】妊娠後期: ₀₅₎前回帝王切開は今回も帝王切開(帝王切開後の経膣分娩)

 前回帝王切開は今回も帝王切開
(帝王切開後の経膣分娩は可能か?)

以前に帝王切開(帝切)したことがあると子宮に傷がついています。その為経膣分娩させると、無視できない頻度で、前回の子宮切開創が開いて、子宮破裂が起こります。

<前回の帝切>

 

 

<今回の経膣分娩で前回の子宮切開創が破裂>

★子宮破裂の頻度1人/200人、

★児死亡1人/200人、

★仮死状態で生まれる児1人/50人、

★★★★子宮破裂の創から腹腔内へ多量に出血した場合、分娩の途中や分娩直後に、母体救命の為に子宮摘出術まで必要になる事があります。

その為、基本的に陣痛が始まる前に、日を決めて帝王切開で娩出することが多いです。世界的に見ても「前回帝切は今回も帝切」が多いです。

 

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「前回帝切で今回経膣分娩を試みても良い」時の条件制約が多いです)

子宮破裂の頻度:1人/200人、児死亡率:1人/200人なので、言い方を変えると199人/200人中は問題なく生まれるわけなので、前回帝切の妊婦様を経膣分娩させても問題なく生まれることも多いです。

以下の条件がそろっていれば、経膣分娩を試みても良いことになっていますが・・・。
帝王切開の経験が1回だけ、

前回の帝切の子宮切開創が横切開、

児が骨盤を通過できそう、

帝切以外には子宮を傷つける手術した事が無い、

常時、医師、麻酔医が待機していて、緊急帝切に対応できる状態にある事
常時産科医、麻酔医が待機して母児に異常が発生した時に30分以内に超緊急帝切をして娩出するよう努めますが、30分以内に超緊急帝切をして娩出すること自体が、かなりの周到の準備(無痛分娩の時に使われるのと同じ硬膜外麻酔を予め入れておくとか)と高度な技術が必要なので、難しい事です。
実際には、異常発生した時に、たとえうまく30分以内に帝切して娩出できても、間に合わないことがあります。その様な緊急帝切も間に合わない急変もあります。
実際には、産科医が一人の妊婦様に付きっきりで監視していられない、特に夜等の時間外では目が届きにくくなります。
帝切したことがある妊婦が経膣分娩を試みて成功するのは50~70%。分娩途中で子宮破裂兆候や胎児仮死の為、急遽帝切に切り替わることが30~50%あります。

妊婦が経膣分娩の危険性を承知の上、経膣分娩を希望している場合

 

結論を言うと、前回帝切を今回経膣分娩をTryすることは、制約が多い上、リスクを覚悟しなければならないので、実際にはかなり難しいです。

 

前回帝切で、今回経膣分娩を試みて、万一子宮破裂が起こると、
a)児が死亡した上、
b)腹腔内の多量の出血の為、子宮全摘出術までも必要になることがあり、

起こったら悲惨な状態になります。


★子宮破裂の頻度:1人/200人、
★児死亡率:1人/200人、
★仮死状態で生まれる:1人/50人、

問題が起こる確率は、低く見えますが、起こったら悲惨な状態になります。

 

【ガイドライン産科編’14】,       【臍婦人科研修の必修知識’13】

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06】分娩時: ₀₇₎分娩がどのくらい進行しているかな?、もう産れそうかな?、まだまだかな?

 

分娩がどのくらい進行しているかな?、まだまだかな?、もう産れそうかな?、

陣痛が始まったら、分娩がどの程度まで進んでいるのか気になるところです。分娩の進行の程度はで判断します。

陣痛の間隔、陣痛の強さ(痛さ)、

子宮口の開き具合(子宮口開大度)

児頭の下降の程度(児頭下降度)

 

 

陣痛の間隔、陣痛の強さ(痛さ)
陣痛の間隔
陣痛開始したばかりの時は陣痛の間隔は10~15分毎ですが、
分娩が進行するにつれて、8分毎➡5分毎➡3分毎の様に、次第に間隔が短くなります。
3分毎に陣痛が来るようになると児娩出がかなり近そうと考えます。

陣痛はグラフ上では下図の様に書けます。

陣痛が起こっている時間(痛い時間)は30~50秒程度です。

陣痛の間隔の測り方は、陣痛の始まりから次の陣痛の始まりまでの時間を測ります。

 

陣痛の強さ(痛さ)
陣痛開始したばかりの時は、あまり痛くなく、お腹が定期的に張る位の感じの方が多いです分娩が進むにつれて痛さを感じるようになります。分娩の後半になるとかなり痛くなります。児娩出に近づくと痛さは激烈になります。
陣痛の強さでも「まだまだ」か「だいぶ進んで来た様だ」とか「児娩出間際」か見当が付きます。

 

★CTG(分娩監視装置)で、「陣痛の間隔」や「陣痛の強さ」を監視します。

     
※グラフの紙送りは解り易いように1㎝/分にしてあります。

 

 

 

子宮口の開き具合(子宮口開大度)

(1)子宮口は最初は閉じています。
(子宮口は硬く閉鎖)
下から子宮口を見ると左図の様に見えます。

分娩の経過を長方形のグランド一周に例えると、まだスタートライン上です。

これから、転がり落ち始めるのか、始めないのか不明、まだはっきりしません。

 

 

(2)陣痛が開始すると子宮口は開き始めます。
(下図は子宮口3㎝開大)

下から子宮口を見ると左図の様に見えます。

グランドの第1コーナー付近です

転がり始め、です。

 

 

(3)陣痛がさらに強くなると子宮口はさらに開き児頭も下降してきます。
(下図は子宮口5~6㎝開大)

下から子宮口を見ると左図の様に見えます。

グランドの中間点付近です。

坂の中間点。

 

 

(4)陣痛が激烈になり、子宮口は児頭が通過できるくらい、約10㎝開きます。
(10㎝開くと子宮口全開大と言います)

下から子宮口を見ると左図の様に見えます。

第4コーナー付近です。最後の直線コース、あと1~2時間です。

 

 

 

児頭の下降の程度(児頭下降度)
★児頭の先端がどこまで下降してきたかを見ます。

坐骨棘(ざこつきょく)(棘突起とも言います)とは、骨盤の骨の一部で少し尖った突起です。気を付けて触ってみると産道(膣壁)の中間点に触ることができます。その棘突起を基準にして、児頭の先端が棘突起の上方何㎝にあるか、下方何㎝にあるかを見ます。

 

(2)児頭の先端が下降し始めています。

分娩の経過を長方形のグランド一周に例えると、第1コーナー付近です。

転がり始め、です。

 

 

(3)児頭の尖端が棘突起まで降りてくる(±0㎝まで降りてくる)と、ちょうど中間点まで下降した感じになります。

グランドの中間点付近です。

坂の中間点。

 

 

(4)+2㎝まで下降すると児娩出に近いです。

第4コーナー付近です。最後の直線コース、あと1~2時間です。

 

 

(5)+3㎝まで下降すると産道の出口(膣口)に近いです。間もなく生まれます。
ここまで下降していると、必要ならば、出口に近いので吸引でも鉗子でも容易に引っ張り出すことができます。

 ゴールテープ直前です。

  ゴールテープ直前です。

 

※赤ちゃんの状態が悪い場合は、吸引や鉗子で児を引っ張り出して早く生ませることがあります。吸引分娩、鉗子分娩と言います。

 

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