婦人科について

婦人科は主に女性の生殖器の病気を扱っています。
婦人科で関連する臓器は「子宮」「卵巣」「卵管」「膣」「外陰部」などの腫瘍性疾患(子宮筋腫や子宮頸癌など)ですが、性感染症、更年期障害、不妊、生理不順などの内分泌疾患やメンタルな部分も関係した相談や治療を行なっております。
では、婦人科はどのような症状の患者さんが受診するのでしょうか?
一般的には以下のような症状です。
- 下腹痛、生理以外の出血がある、生理痛がひどい
- 生理不順、生理が遅れている、妊娠しているのかも?
- 外陰部にかゆみがある、おりものが多い、臭いがする
- ガン検診を受けたい
- 子どもがなかなかできない
- 顔がほてる、寝汗をよくかくようになった、生理前にイライラする
この中でも「下腹痛(へそから下~陰毛のあたりまでの痛み)」という症状は、内科や外科を受診することも多いと思います。 腹痛の原因が、虫垂炎(もうちょう)や急性腸炎(下痢)の場合もありますが、「子宮外妊娠」「流産」「卵巣腫瘍が捻れた」といった産科や婦人科が扱う病気が含まれていることがよくありますので注意が必要です。
また、子宮から離れた胃のあたりの激痛がクラミジアという性病が原因であることもあります。
少しでも痛みや不安なことがある場合は、恥ずかしがらずに婦人科で受診するようにして下さい。
子宮ガン検診
子宮ガンには、子宮頚部(入口)に発生する子宮頸ガンと、子宮の体部に発生する子宮体ガンがあり、子宮頸ガンが子宮ガンの全体の80~90%をしめています。
実際の診断は、病歴や症状と、視診・内診、そして細胞診の結果からガンの疑いがあるかどうか決めます。もし、子宮体ガンを含めて、子宮ガンの疑いがあれば、さらにコルポスコープ検査や、病理組織診断を行ない、診断の確定を期します。
これらの検査によって、ガンの他にも、子宮筋腫や子宮、膣の炎症性疾患も発見されます。
中絶
手術の方法は妊娠の初期と中期とでは異なり、その難易度や危険性にも大きな差があります。もちろん、中期の方が難しく危険性が増すことはいうまでもありません。
わが国では、優生保護法の第14条で、次のような場合は、本人と配偶者の同意を得て人工妊娠中絶手術を行なうことが認められています。
- 本人または配偶者が精神病、精神薄弱、精神病質、遺伝性身体疾患または遺伝性形態異常を有している。
- 本人または配偶者の4親等以内の血族関係にある者が遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患や遺伝性形態異常を有している。
- 本人または配偶者が癩疾患(ハンセン病)にかかっている。
- 妊娠の継続または分娩が身体的または精神的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある。
- 暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した。
ただし、緊急の場合を除いては、都道府県の医師会が指定した医師(優生保護法指定医)だけが手術を行なうことを許されていて、当院でも可能です。
アフターピル(緊急避妊薬)
何らかの事情によって、避妊に失敗した性交後や低用量ピルの飲み忘れなどの対処方法としてアフターピルを使用します。
性交後72時間以内に服用することによって、妊娠の可能性を80%まで減少させることができます。 また、性交後の服用は早いほど成功率が高くなりますが、72時間以上経過しても120時間以内ならば60%程度の避妊効果があるとされています。
緊急避妊が失敗した場合でも、胎児に影響はありません。
妊娠時にはアフターピルの10倍以上の女性ホルモンが分泌されているので、胎児にはピルやアフターピルの影響はまったくありません。
更年期
更年期障害とは
女性の更年期とは、性成熟期から老年期への移行期をいいます。つまり、規則正しくあった月経が不規則となり、月経がなくなるまでのいわゆる閉経前後の時期をいいます。
更年期がくる時期は、人によって多少のずれはありますが、おおよそ44~53歳までの間に、2~3年間は誰でも経験します。
この時期は、卵巣ホルモンの分泌状態が成熟期から老年期へと変わる時期でもあるため、月経の異常がおこりやすくなると同時に、様々な身体的、精神的な違和感も現われやすくなります。
違和感を感じ、これを口にすることを愁訴といいますが、その違和感は本人だけが感じる自覚症状で、他人には分からないものです。他人から見ても分かる他覚症状があっても、本人がうったえる症状とは関係がないことも多い場合もあります。
このような愁訴が不定愁訴です。更年期におこるこの不定愁訴を、更年期障害と呼んでいます。
婦人科を受診することが大切です。
更年期にそれらしい症状が現れたからといって、勝手に更年期障害と決めてしまうのは危険です。
一度は婦人科医の診察を受け、もっとも強い症状のの原因をしらべる検査を受けておくことが大切です。更年期障害が原因と思っていた症状が、実は病気の症状だったとういうこともあるからです。
例えば、胸痛があったり、発汗がひどかったり、胸がドキドキしたりといった症状が強いときには、心臓の状態を調べるための心電図検査、甲状腺の状態を調べる甲状腺機能検査が必要になります。
更年期障害らしい症状が現れたときには、少なくとも血圧測定、血沈、血液生化学検査、心電図検査、甲状腺機能検査は受けるようにしましょう。
これらの検査で異常がなければ、更年期障害と考えて治療します。
避妊リング(子宮内避妊器具)
以前、日本ではおもにリング型のものが用いられてきたため、避妊リングと呼ばれています。
子宮内に挿入しておき、受精卵の着床を阻止して避妊するものです。医師が炎症の有無、子宮の形態異常や子宮筋腫の有無などを検査したうえでIUDを挿入します。
下腹痛、不正出血、月経異常などの副作用をともなう場合もありますが、挿入後は手間がかからず性感もそこなうことがありません。
副作用や位置のずれ、自然脱出などを調べてもらうため、挿入後は定期的に医師の診察を受けるようにして下さい。
通常は2~3年ごとに交換しますが、もっと長く挿入しておくことも可能です。但し、定期的に医師の診察を受けるようにして下さい。
このIUDによる避妊方法で、避妊に失敗して妊娠してしまう確率は100人のうち3~5人くらいといわれています。
月経困難症
月経痛は、月経があるどの年代の人にもおこりますが、とくに初潮があって2~3年後、排卵が正常におこるようになる15~16歳から頻度が高くなります。
月経開始と同時か月経が始まる前日ごろから、下腹部通、腰痛、下腹部膨満感、さらに吐き気、嘔吐、人によっては頭痛が現れてきます。下腹部痛は月経開始後1日か2日でおさまるのがふつうですが、月経期間中ずっと続くこともあれば月経終了後も数日間続くこともあります。 このような症状がある場合は、ぜひ婦人科の診察を受けましょう。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の筋肉に発生する良性の腫瘍(できもの)です。
ガンのような悪性腫瘍とはちがい、良性の腫瘍なので直接生命をおびやかすということはありませんし、子宮筋腫がガンになりやすいということもありません。
人間に発生する腫瘍の中で、もっとも頻度の高い腫瘍の1つで、30歳以上の女性の約20%の人は子宮筋腫をもっているといわれるほどです。ただし、症状がひどくて治療を必要とするのはその一部で、大部分の人は症状もなくふつうに生活を送っています。
子宮内膜症
婦人科で行なう手術のうち、10%前後がこの子宮内膜症だといわれていて、かなり頻度の高い病気です。
子宮内膜症がおこると、その部位に腫瘤が(こぶ)ができ、周囲の組織と癒着をおこしやすくなります。非常に進行した場合は、骨盤内の臓器すべてが癒着し、ことかたまりになってしまうこともさえあります。
婦人科ガン検診
婦人科ガン検診では、通常のガン検診「食道」「胃」「肺」「直腸」「胆嚢」などに加えて、子宮と乳房についても検査します。 子宮体ガンを含めて、子宮ガンの疑いがあれば、さらにコルポスコープ検査や、病理組織診断を行ない、診断の確定を期します。
ガン検診は、ガン発見のためには有力な手段ですが、あくまでもスクリーニング(ひろい上げ)を目的としているため「疑わしきもの」はすべて精密検査にまわします。
子宮ガン予防ワクチン
「ガン」と聞くと、家族や親戚にガンになった人がいるとなりやすいというイメージがありますが、子宮頸ガンは遺伝などに関係なく、性交渉がある女性なら誰にでもなる可能性のある病気です。
最近では20代後半から30代に急増し、若い女性の発症率が増加傾向にあります。
ワクチンを3回きちんと接種した人は、HPVに対し高い抗体作用が得られ、少なくとも20年間は予防が期待できるとされています。 接種期間中に妊娠した場合は、その後の接種は見合わせることとされています。
尖圭コンジローマ手術
基本的には、電気で焼いたり(電気焼灼)または、CO2(炭酸ガス)レーザーによって、尖圭コンジローマのイボを1つ1つ除去する治療です。
イボ状になっている尖圭コンジローマに関しては、1つ1つ除去していく以外に治療方法がありません。
イボが発生した箇所の周りの皮膚は、すでにHPVが感染しているので、1回の治療では完治することはできません。だいたい5~10回の治療が必要となります。
治療後は、治療を受けた箇所とその周りの皮膚をしっかり経過観察をすることが大切です。
尖圭コンジローマは再発率の高い感染症ですが、治療後半年間で1度も再発が無ければほぼ完治(90%位)と考えて良いでしょう。まれに半年経過しても再発することがありますので、完治(100%)と考えるのは、1年再発がない状態になった時とお考えください。
治療後は、膣や外陰部とその周辺を常に清潔に保つことが大切です。
頸管ポリープ切除
子宮頸管の粘膜に、茎のある赤いやわらかい良性の腫瘍が発生する病気です。
原因はまだはっきりしていませんが、子宮頚部の炎症や、ホルモンの作用がもとになっておこるのではないかと考えられています。妊娠中の女性に、しばしばみられます。
不正出血が多く見られますが、時折、まったく症状が出ない場合もあります。
簡単で安全な手術なので外来で受けられます。しかし、ときにポリープが非常に大きくなってしまったときなどは、入院のうえ手術が必要になることもあります。 また、たとえ症状がなくても摘除して細胞を調べてガンでないことを確認します。
膀胱炎
膀胱の粘膜に炎症がおこるもので、泌尿器科で一番患者の多い病気です。
特に女性に多い病気で、幼児期に比較的多いほかに、20歳以上の性的活動期と閉経期に発病のピークがあります。 頻尿、排尿痛、尿混濁(尿が濁る)、または血尿が多く見られますが、排尿とは関係なく腹腔部(下腹部)が痛んだり重苦しい痛みを感じたりすることもあります。
バルトリン腺開窓術
バルトリン腺は、小陰唇の内面にあって、粘りけのある乳白色の分泌物を出し、性交を容易にします。 このバルトリン腺に、大腸菌や淋菌などの細菌が感染して炎症を起こしたものを「バルトリン腺炎」といいます。 化膿して膿がたまると、大きく腫れあがってきます。これを「バルトリン膿瘍」といいます。
バルトリン腺炎をくり返していると、バルトリン液の排泄口がふさがってしまい分泌物が中にたまり、親指大から鶏卵大にふくれてきます。赤く腫れ痛みをともなう状態を「バルトリン嚢胞」といいます。
抗生物質を使って治療しますが、外陰部を冷湿布すると症状が和らぎます。
膿瘍があれば切開して膿を出します。 慢性化して、炎症をくり返すときは、バルトリン腺を摘出します。
外陰部腫瘍切除術
外陰部は「できもの」ができやすい個所です。
外陰部をまじまじと見ることは少ないと思いますが、色々な原因で多くの「できもの」ができる発生する場所なのです。
外陰部は、皮膚と同じ性質ですが、それ以外に粘膜や分泌腺などさまざまな器官が混在していて、しかもウイルス、細菌、傷、性行為など「できもの」が誘発する原因も多く、「できもの」ができやすい条件がそろっている場所なのです。
外陰部とその周辺を常に清潔に保つことを心がけて下さい。
- コンジローマ
これはヒトパピローマウイルスの感染によって米粒大から親指の頭くらいの「できもの(腫瘍)」が発生します。
発生する場所は、外陰部から膣・大小陰唇などの性器や肛門周辺などに「できもの」が発生します。
初期症状の段階では痒みや痛みなどの自覚症状がないため、できものが大きくなったり数が増えてきて、違和感を覚えるようになってから診察に来る患者様が多くみられます。 治療方法は、軟膏を塗布する方法もありますが、完治までに時間がかかるため、通常は電気で焼いたり(電気焼灼)または、CO2(炭酸ガス)レーザーで「できもの」を切除する方法となります。 - 外陰ガン
婦人科の性器ガンの中では、子宮ガン、卵巣ガンについで多く、婦人科ガンの3%前後みられます。
年齢は60歳以上が多く、40歳以下でも10%程度発症するといわれています。
発症する場所は大陰唇が95%ともっとも多く、皮膚と同じ性質のガンが85%もみられます。その他、悪性黒色腫、バルトリン腺ガンなどであります。 - その他
外陰部が腫れて痛いといって受診される方に比較的多いのは、バルトリン腺膿瘍、感染性の表皮のう胞、化膿性汗腺炎などです。
その他、外陰部の「できもの」で痛みや痒みがないものとして、上皮性のポリープ、線維腫、外陰上皮内腫瘍、汗管腫、伝染性軟属腫、といったものもあります。
視診や内診でそれぞれの症状を診察・診断のうえ適切な治療を行います。